鎌田浩毅著「地震と火山の日本を生きのびる知恵」(メディアファクトリー)を読みました。
著者の鎌田氏は地球科学者(専門は火山)であり、京都大学の教授です。講義には多くの学生が集まる人気教授です。
1000年に一度の大活動期に入ってしまった日本列島について、科学の目から分かりやすく解説しています。
鎌田氏と女優の室井滋さんとの対談が章ごとのはじめにあり、「動く大地の時代」が始まったことや「長尺の目」で物事を考えることの大切さを説明しています。
対談のあとに本論として、地震や火山のメカニズムについて図表などを用いて分かりやすく解説されています。更に、首都直下型地震や東海・東南海・南海の3連動地震、富士山をはじめとした活火山の噴火について言及しています。
東日本大震災は始まりであり、今後我々は「動く大地の時代」を生き抜いて行かなければならないのです。そのことを知って暮らすのか、知らずに暮らすのかでは大きな差が出てくると思います。
日本人は地震や火山により恵み得ている面もあり、活断層の上で暮らしてきたのです。その大地で生き抜くためのDNAを持ち合わせていると筆者は語っています。
この本でも引用されていますが、鴨長明「方丈記」の書き出し"ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。・・・"は日本人として何か惹かれるものがあります。無常という境地は日本人のDNAに染み渡っているのかもしれません。
" 私は本書で、時間的にも空間的にも大きな長尺の目の視点を持つ生き方の提案を、皆さんにしたいと思います。日本列島では今後も引き続き天変地異が押し寄せてきます。大地動乱の時代はすでに始まってしまいました。
しかし、それを怖いものとしてただ怯えるのではなく、長い目で興味深い歴史と地理と自然の数々を発見していくような視座を持っていただきたいと思うのです。それこそが、我々日本人が祖先から受け継いだ「しなやかな生き方」なのではないでしょうか。 " ー 196ページ
一つ思うことは、個人が大地動乱の時代に備えることも大事ですが、国や行政が今後起こり得る大災害への備えを十分に行わなければならないと思います。今までの大災害を見ていると、まさに日本人のDNAとも言うべき国民の個々の力(復活力?)に頼り過ぎて来たように思えるのです。それも大事ですが、特にインフラを含めた備えという面で国や行政の力がもっと必要だと感じています。
また、本書でも述べていますが、都市に集中し過ぎた人口や資産をはじめ、あらゆる機能分散を進めて行く必要があると思います。
官民と個人それぞれの立場で大災害に柔軟に対応する備えと精神意識を享受することが重要だと思います。
長尺の目を持って「しなやかな生き方」を目指したいものです。