さんてつ 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録 」(バンチコミックス 吉本浩二 著)を読みました。東日本大震災で被災した三陸鉄道の一部運行再開までのドキュメンタリー漫画です。
さんてつ: 日本鉄道旅行地図帳 三陸鉄道 大震災の記録



三陸鉄道の社長や運転士をはじめとした社員の方々への著者本人による取材を元にした実話です。

著者の描写力が素晴らしく、「さんてつマン」の鬼気迫る運行再開への取り組みが映像のように蘇っていると思います。

震災2日後、社長自らが被害状況を確認のために車を走らせ、一日も早く列車を走らせる決意をします。地震から5日後には被害が少なった路線の11.1kmで運行を開始します。 当初1週間は無料での運行でした。

3月29日には、線路が残っている小本-宮古間の25.1kmの運行を再開させます。試運転で列車を走らせた際、沿線の人たちが嬉しそうに手を振っている姿が感動的でした。

当初、再開できたのはこの2区間だけでした。全線の復旧には2年以上掛かる予定です。

橋脚や高架橋が流出した地域もあり、本格的に復旧させるには莫大な費用が掛かります。そこまでの費用を掛ける必要について、地元人でも賛否があったようです。費用対効果を考えれば、厳しいことは誰の目からも明らかですから当然の反応なのです。

支援のために1000枚の切符を買った明治学院大学の原教授の言葉が重かったです。三陸鉄道は再開することで地域住民に「安心」を与えたという言葉です。そして、鉄道を廃止してバスに切り替えた地域は必ずダメになっていくという言葉です。



地域に根差した鉄道マンとして、誇りと使命を持って復旧に取り組んでいる「さんてつマン」の地道な努力は胸を打つものがありました。

三陸鉄道には北リアス線と南リアス線があり、この2つの路線はJR山田線で結ばれています。 南リアス線の南側にはJR大船渡線があり、沿岸部の路線がすべて1本につながるにはかなりの困難を要すると思われます。

鉄路の復旧は地域の復興にとって大きな役割を担うと思いますので、1本につながる日が1日も早く来ることを祈ります。