蝦夷の英雄アテルイの真実を描く「毘沙門叩き」(朝日クリエ 木内宏著)を読みました。著者が構想から21年で書きあげた渾身の物語です。古代、東北に暮らした先住民蝦夷とアテルイの汚名を返上する強い決意のもとに書きあげた書です。

毘沙門叩き
毘沙門叩き


現在残る歴史上(文献として残る)、大和朝廷によって蝦夷征伐が行われ、征夷大将軍として遠征した坂上田村麻呂は毘沙門天の化身として崇め立てられました。一方、蝦夷側の指導者阿弖利爲(アテルイ)は賊徒として汚名を着せられ処刑されました。

しかし、蝦夷征伐はあくまで中央から見た視点です。主人公である盛岡の蝦夷館学芸員は東北の先住民である蝦夷側から視れば侵略であり、アテルイは田村麻呂の裏切りにより処刑されたと推察します。主人公が蝦夷の末裔たちに出会い、汚名を晴らす物語です。同時に米軍基地に関る不条理な条約に対する反旗も織り込まれています。

田村麻呂が毘沙門天の化身とされてたことから、毘沙門天が物語の核となります。毘沙門天像の一時盗難や蝦夷の末裔たちの儀式にも登場します。
この本を読んで気付いたのですが、岩手には毘沙門天を祀っているところや毘沙門天と名の付く場所が多いと思います。

物語の中で主人公の生活や盛岡の街並みなどの細かい描写も魅力的な小説でした。

私自身は実質的には大和の血を引いていると思うのですが、東北に住む者として同じ土地に住んでいた蝦夷やアテルイに感情移入してしまいました。この小説こそが真実ではないかと思わされました。